若草野球部狂想曲  [必殺技辞典]

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作者 一色銀河
発行 メディアワークス(電撃文庫)
巻数 全4巻(本編全3巻+短編集)

兵庫県の郊外に位置する私立若草高校。この高校の野球部は、ひときわ異彩を放つ集団であった。部員が九人ぎりぎりしかいないだけでなく、そのうち四人が女子部員なのである。高校野球は女子の出場を認めていないため、彼らは公式戦に出場すらできない有様。そんな野球部に、ある日学校側から「次の練習試合に勝てなかったら廃部にする」という非情の通告がくだった。しかも、その相手は今年の甲子園優勝校・神戸学園。誰もが部の存続を絶望視していたその時、救世主とも言える転校生が現れた。彼の名は西宮光児。「東の怪物」と呼ばれ甲子園を騒がせた天才捕手である。甲子園で敗れた神戸学園へのリベンジに燃える彼は、強引だが理にかなったやり方で野球部を改革していく。そして光児の改革の中心となるのは、非力な女性投手・文月真由美だった…。

電撃文庫としては(というか、ライトノベル全体としてみても)珍しい、野球を題材にした作品。ストーリーは光児が転校してきた夏の終わりから進級直前の春休みまでを描いており、本編完結後に発表された短編集はそれ以前の出来事や各巻の間を埋めるエピソードを収録している。また、各所にメインキャラ三人による「野球講座」が挟まれており、これを読むことで野球をあまり知らない人でも専門用語が飛び交う野球シーンにある程度付いていけるようになっている。
なお作者は熱狂的な阪神ファンであり、そのせいか登場人物の多くは阪神、または関西地方にちなんだ名前となっている。下はその一例である。
西宮光児:甲子園球場がある兵庫県西宮市+「甲子園」
文月真由美:もと阪神の人気選手・真弓明信(名字は真弓の背番号「7」→七月→文月)
春野亜紀:毎年阪神が春季キャンプを行っていた高知県安芸市(つまり春の安芸→春野亜紀)
また、光児のライバルである「松原由信」や、野球部を潰そうとする理事長の「渡辺」なども、野球ファンならにやりとするネ−ミングであろう。

[1]FF(フォルス・ファスト)ボール
[2]FF(フォルス・ファスト)ボール二号
文月真由美
若草野球部狂想曲
[1]主人公の光児が真由美に習得させた切り札・その一。別名「偽りの快速球」。一見ただのストレートに見えるが、打者の手前で微妙に変化するため非常に打ち損じになりやすい。覚えること自体はさほど難しくないボールだが(実際、現実でも同じボールを投げているピッチャーはいる)、真由美の場合は持ち前の体の柔らかさにより普通の投手とは比べものにならない威力となる。なおこの名前は光児の覚え間違いで、正式な球種名はシンキング・ファストボール。しかし、作中では誤った名前の方で定着している。(松の字さんより)

[2]白桜女子野球部との試合で披露された、新たな切り札。元々は光児が冗談半分で考案したものらしい。トルネード投法からアンダースローに変化するフォームでAFボールを意識させておき、そこからスローボールを投げ込むことで打者の意表をつく。AFボールを打てる相手でなければ使う必要性がないため、実際に使用されたのはこの時の一回だけであった。なおAFボールを基本としながらFFボールの名が付けられたのは、このボールがFFボール同様打者をだますボールだからである。(松の字さんより)

AF(アドバンスド・ファスト)ボール 文月真由美
若草野球部狂想曲
主人公の光児が真由美に教えた切り札・その二。トルネード投法からアンダースローへと変化する独特のフォームから繰り出されるボール。トルネード投法で蓄えたエネルギーとアンダースローの軌道によって、重力によるボールの自由落下が通常よりも大幅に少なくなる。そのためバッターは目測を誤り、空振りか凡打に倒れてしまうのである。ただしこのボールは、無理なフォームで投げるためピッチャーの体にかかる負担が大きい。また、白桜女子野球部との試合では、相手チームキャプテンの早坂により三つもの弱点が発見されてしまっている。第一に普段と違うフォームで投げなければならないため、バッターにあらかじめ球種がばれてしまう。第二にプロ以上の制球力を持つ真由美ですらうまくコントロールできないため、常に同じコースに投げられる。第三に、投げてからホームベースに届くまでの時間が常に等しい。つまり相応の実力を持った打者ならば、タイミングを合わせるだけで簡単に打ててしまうのである。これらの弱点は、結局最後まで克服されることはなかった(弱点を突けるだけの打者がほとんどいなかったというのもあるが)。(松の字さんより)

夙川(しゅくがわ)打法 八木沢勝彦など
若草野球部狂想曲
若狭常陽のエース・有馬が投げる150km/hの豪速球を攻略するため、光児が考案した打法。動く物体への反応が早い「周辺視野」でボールを見ることにより、通常よりは速球に対抗できるようになる。光児と真由美をのぞく若草高校の選手全員がこの打ち方を使用したようだが、実際に使うシーンが描かれているのは八木沢だけである。なお名前の由来は、周辺視野がずば抜けて優れている若草高校のセカンド・夙川奈留緒から。(松の字さんより)

確率四分の一打法 夙川奈留緒(しゅくがわなるお)、六甲道稔、松原由伸
若草野球部狂想曲
若狭常陽との試合で相手投手の配球が外角低めに偏っており、しかも四球の打ち一球しかストライクゾーンを通過していないことに気付いた夙川が考案した打法。その一球が来ることを祈って外角を狙い続けるという、かなりギャンブル性の高い戦法である。その後控え選手の川藤により左打者の時はストライクゾーンを通る確率が三分の一になることが発見され、「左打者に限り確率三分の一打法」に訂正(?)された。(松の字さんより)


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