かの小野一刀流を受け継ぐ三代目・小野次郎衛門はある日、孫娘のお志麻を将軍の側室にするよう言ってきた柳沢出羽守吉保の要求をはねつけた。泣く子も黙る権力を持つ吉保は怒り、生涯不犯を誓ったというお志麻を汚すことで次郎衛門に恥をかかせようとする。そこで、深いつながりのあった甲賀忍者の中から、忍法「濡れ仏」を使う十六夜孫六という男を選び出された。ところが、小野一刀流の修行もしていた孫六は、吉保の報復を恐れた次郎衛門によって孫娘を守るボディーガードとして選び出されていた。相反する立場に挟み込まれた孫六は、苦悩の末にとある奇策をひねり出すのだが・・・・・・・・
山田風太郎・忍法帖小説短編のひとつ。「オール読物」65年8月号に掲載され、短編集収録時には『濡れ仏試合』という題に変更されている。 |
・濡れ仏 | 十五夜孫六 |
甲賀忍法のひとつ。術者と交わった女性を、色情狂に変えてしまう。彼と交わる女性は、この世のものならぬ快楽を味わった挙句、術者である孫六を求めて、怪しくも艶かしい狂人と化してしまうのである。この術にかかった女性は、皮膚が「香汗」という体液に覆われている。(ケケケさんより) |