「神サマ・・・ 人間の掌につかめるモンは・・、最初から決まっているのかい・・・・?」 中国清朝末期・直隷省・深県 ひとりの男が、牢に入っていた。彼の名は峪生。形意拳の達人として知られた男である。捕匪賊としても知られた男だったが、拳法家との果し合いの末に相手を殺してしまい、懲役三年の刑を受けていたのだ。 牢に入った峪生は、今までの人生を思い出す。腕っ節だけが取り得の少年だった。強くなれば何もかも手に入ると思っていた。だが、強くなればなるほど欲しい物はすり抜けてゆく・・・・。自分の手は拳しか作れない。自分は何も掴めないのだろうか・・・? そんな峪生も釈放される時が来た。牢から出た彼を待っていたのは、三年前に殺した武術家の弟子、そして・・・・・。 掲載・・週刊少年サンデー平成6年6月増刊号 作者・・藤田和日朗 短編集『夜の歌』に収録。 清朝末期を舞台に、拳を振るうことしかできない不器用な男の生き様を描く。 |
・虎撲手 | 峪生 |
牢に入れられていた三年間に、ひたすら修行を積み重ねていた峪生が編み出した技。形意拳十二形拳のひとつ「虎形」の変形技で、相手の突きをかわしながら懐にもぐりこみ、両手の突きで吹っ飛ばす。挑戦してきた馬を一撃で倒した技である。 (ケケケさんより) |
・崩拳 | 峪生 |
形意拳の基本である五行拳のひとつ。敵の中段突きを片手でねじりつつ、もう片方の手で相手のみぞおちを打つ技。峪生は三年間ひたすらこれの練習に明け暮れ、入門を許可された。現在でも、もっとも得意としている技である。(ケケケさんより) |