イレギュラーズ・パラダイス [必殺技辞典]

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著 者 :上田志岐
イラスト:榎宮祐
(富士見ミステリー文庫)

ぐるぐる渦巻きの名探偵の著者である上田志岐による、ケリポット図書館の存続と世界を滅ぼす童話「DDD」を絡めた日常を描いた第6回龍皇作品。
本作は嘘つきで女たらしでなおかつ軍警察からも追われているというロクデナシなケリポット図書館2代目館長レクト・ルードワースと、初代館長ポリグロット・ルードワースが東方の神話事典「永楽」をベースに作られた人工精霊「書禮」のエイラク・ヒャッカ、整理部門の主任司書の書禮リーフ・エスペランサ、受付カウンターで貸し出しなどを行うゴーレムの老人コンラッドなどのケリポット図書館職員や、この図書館を目の敵にするベトノワール図書館の職員でケリポットの業務妨害を行っているレーベン兄弟、過去の事件のために世界に絶望し、DDDを発動させようとする少年アルカ・テレウスなどの登場人物たちが織り成す日常の中で登場人物たちが思い思いに今を生きていくといった感じの内容である。

【あらすじ】
 魔術師「ポリグロット・ルードワース」が設立し、初代館長の死後財政状況は最悪だがさまざまなマガイモノたちが働く楽園「ケリポット図書館」はある日グーデリア市役所から市の管理する土地と施設の接収のための廃館命令と「人間の館長が存在し、なおかつグーデリア市民の会員を一年以内に1000人集められれば廃館命令を撤回する」という通知を受ける。
 ヒャッカらケリポットの職員は新館長としてレクトを迎えるものの、その新館長は嘘つきで女たらしで、更にはさまざまな罪で軍警察から追われているという根からのロクデナシだった。
 さらにケリポット図書館に世界を破滅させる魔術を秘める赤い童話「DDD」がやって来たことから、DDDをめぐってさまざまな騒動が巻き起こる。


【【簡易用語集(一部ネタバレ含む)】
・マガイモノ
 人間などによって人工的に造られた、改造された生命の総称。
 ゴーレムや人工精霊、人工的に造られた亜人など作業用や愛玩用などさまざまな理由によって造られており、見た目は人間とほぼ変わらないものから明らかに人間とは異なるものまでさまざまな固体が存在する。
 そのような製造目的や性質から人間からは好奇心と偏見の目で見られ、人間が保有する権利のほぼ全てを持たないなどさまざまな差別なども存在する。
 現在は役所によって識別番号が振り分けられており、さまざまな情報が記された識別標が付けられている。(ちなみにヒャッカの識別標は耳に付けられています)

・グーデリア市内の図書館
 グーデリア市内には、「ケリポット図書館」「ベトノワール図書館」「グーデリア大学図書館」「星法院図書館」「聖典図書館」の5つが存在する。
 基本的に取り扱う書籍の内容は異なるため、利用者層が重なることはないが、例外としてケリポットとベトノワールだけは利用者層が被っているため、資金力のあるベトノワールがケリポットの利用者を吸収しているという実状がある。
 グーデリア市内に存在する各図書館の説明です。
《ケリポット図書館》
 現代における希代の魔術師「ポリグロット・ルードワース」が設立した会員制私設図書館。
 職員は館長以外「マガイモノ」と呼ばれる存在であり、見方を変えればそこはマガイモノたちの楽園ともいえる。元から財政状況がよいとはいえなかったが、初代館長ポリグロットの死後ベトノワール図書館の妨害もあって財政が急激に悪化、さらにはこの図書館が建っている土地とその建物はグーデリア市から借りているものであったために市役所から敷地・施設の返還命令が出される。
 その際に、人間の新館長と図書館の会員を1000人集めればその廃館命令を撤回するという条件を設けられ、ケリポット図書館の職員達はその条件を満たすために尽力する。(その条件を提案したのは生前のポリグロットだったりするのだが…)
 ちなみにこの図書館の正体はポリグロットが「DDD八つ目の物語」をベースに創り上げた最高の製造魔術で、三つの条件(グーデリア市内在住の図書館の会員1000人から集めた微量の魔力、満月の力による魔力増幅、ヒャッカによる「希望の章・第一の祈り」の発動)によって起動し、術者の思うように世界を変えたり新たに世界を創り出したりすることができる。
 DDDも含めてこの図書館ほど魔術的・金銭的価値、危険度が高い場所は現代には存在しないだろう。
【Data】
 職員 :レクト、ヒャッカ、リーフ、コンラッド 等
 設立者:ポリグロット・ルードワース
 現館長:レクト・ルードワース(本名:レクト・ローウェン)
 所在地:グーデリア市内 セントラル・エッジ・ストリートの一角
 作品開始時の図書館会員数:31人

《ベトノワール図書館》
 1年前に設立された、グーデリア市内の5つの図書館の中では最も新しい図書館。
 ベトノワール商館が持つ豊富な資金力で一般書籍の新刊を発売日のうちに大量に取り揃えることによってケリポットの会員を奪い、嫌がらせにレーベン兄弟をケリポットに派遣するなどケリポット図書館を目の敵にしているような行動をとっている。(実際はケリポット図書館に残されたポリグロットの魔術を狙っていた)
【Data】
 職員 :レーベン兄弟、ベトノワール 等
 設立者:ベトノワール商館
 現館長:ベトノワール
 所在地:グーデリア市

《グーデリア大学図書館》
 様々な方面の学者向けの図書館。
 世界各地から新旧多数の研究資料が集められ、様々な分野の学者やそれを目指す者達が頻繁に通い、互いの理論を論破し、自らの知識を日々研磨し、各々真理を模索しているというまさに賢者の塔と言える場所である。
【Data】
 所在地:グーデリア市

《星法院図書館》
 ツトラウト最高裁が管理する図書館。
 古今東西の法律書、判例事例集、憲法書簡など裁判に関連する書籍が保管されており、利用できるのは裁判官・弁護し・検事のいずれかの資格を持つものだけに閲覧が許可される。
 そのような閉鎖性の高さもあって、裁判の判決は裁判所内ではなくここで下され、裁判所では判決の内容だけが宣言されるという噂が巷に流れていたりする。
【Data】
 所在地:グーデリア市内 ツトラウト最高裁判所に隣接した土地

《聖典図書館》
 この国の国教であるバテラント教団に属するグーデリア市の教会が管理する図書館。
 教団の聖職者によって書き写された聖書やそれに類する文献の写本を一般に公開している。
 ただし、内容物はあまりにも神聖で高価であるため、書籍は全て鉄の鎖で繋がれ、持ち出したりすることができないようになっている。敬遠な信者が石畳の寒さに震えながら神への祈りを心の支えに呼んでいる姿がよく見られるとか…
【Data】
 所在地:グーデリア市内


【既刊情報】
「イレギュラーズ・パラダイス 赤い童話のワールドエンド」(2003年12月10日発売)
「イレギュラーズ・パラダイス2 青い王女のエスケープホリデー」(2004年5月10日発売)
「イレギュラーズ・パラダイス3 黄色い仮面のリバースホーム」(2004年12月10日発売)
「イレギュラーズ・パラダイス4 白い楽園のムーンダンス」(2005年5月10日発売)


【関連作品・用語】
・『龍皇杯

DDD八つ目の物語 アルカ・テレウス、レクト・ルードワース 他
イレギュラーズ・パラダイス
メルクトル語で書かれた赤茶色の装丁の童話集にして、稀代の天才サーペント・D・スペンサーの生み出した世界を滅ぼす魔術を封じた魔道書「DDD」の八つ目の物語。
この呪文こそ「DDD」最大の呪文、世界の構成に干渉し滅ぼす呪文である。しかしその危険さゆえにこの呪文の魔術式には封印が施されており、その鍵は現在行方不明とされている。
また、呪文詠唱時に魔法陣の周りに展開される障壁だけでも大抵の魔術を防いでしまうため、基本的に詠唱が始まってしまうとその発動を外部から停止させることは困難だろう。だが魔導式の本体はその魔術の高度さのため、外的要因に対してあまり頑丈なつくりはされていない。そのため障壁が破壊されることがあれば、その余波だけでも魔導式の維持のために魔術の強制停止及び再封印が起こる。つまり障壁を打ち破るだけの力があれば発動を停止させることが十分可能である。
封印されている場合に限定はされるが、封印に伴う魔術発動の強制停止の余波による風圧は尋常ではないほどに凄まじいため、本来の使い方ではなくとも見かたによってはその使い道は多彩である。現に2巻でレクトはそれを利用し、通常では手に負えないほどの大きさとなった炎の大半を消し去った。
なお、封印を解く鍵はアルカ・テレウスが連れているマガイモノ「クラックス・レティ」だったりする。
詠唱文:「赤き童話よ、今こそ世界の終わりの童話を紡げ」
(クウガもどきさんより)

英雄の章・第二の神畏 エイラク・ヒャッカ
イレギュラーズ・パラダイス
3巻で完全版「DDD八つ目の物語」の発動を食い止める際にヒャッカが使用した魔術。対象物(このときはシスターカルディナの右手の手甲)に魔術的な庇護の力を与えることによってその対象物が持つ対魔術干渉能力を高め、威力を増大させる。ちなみに見た目は、魔術の対象の表面に光が纏わりついた様な感じになる。
どうでもいいが、攻撃の威力が万全ではない状態で、この魔術を使用されただけでDDDの魔術障壁を打ち砕くシスターカルディナは一体何者だ。
【詠唱文】:英雄の章――第二の神畏・不屈にして、不死なる巨人・我は英雄たる資格ある者をみいだせし・その者に庇護の力を与え賜え。(クウガもどきさんより)

風の章・第四の神畏 エイラク・ヒャッカ
イレギュラーズ・パラダイス
東方の大国で編纂された神話辞典を媒介に作られた『書禮』(人工の精霊の一種)であるヒャッカの体の一部にして魔術の媒介でもある蒼いジャケットが異国の神を記述した十数枚の紙に変化し、そこで語られる風の暴君の上半身がヒャッカの背後に歪み出で、その拳で相手を殴りつける。呪文は「風の章――第四の神畏 伝承にありしは荒ぶれる風の王 その拳をもちて愚者を撃ちぬかん」(クウガもどきさんより)

地の章――第三の神畏 エイラク・ヒャッカ
イレギュラーズ・パラダイス
人工の精霊であるヒャッカの体の一部にして魔術の媒介でもある蒼いジャケットが、異国の神話を記述した数枚の紙に変化し、そこで語られる不可視の壁を作り出す。追いかけてくる黒服たちの目の前に出現させ、正面衝突させた。呪文は、「地の章――第三の神畏・伝承にありしは不可視の壁・誓約に基づき悪意ある者を阻みたまえ!」(クウガもどきさんより)

[2]光の章・第二の神畏
[2]光の章・第五の神畏
エイラク・ヒャッカ
イレギュラーズ・パラダイス
[1]ヒャッカの体の一部にして魔術の媒介でもある蒼いジャケットが異国の神を記述した十数枚の紙に変化し、そこで語られる巨大な純白の羽を持ち、白いローブで全身を覆い隠した、偉大なりし者の代理者の持っている鐘が振って掻き鳴らされると、耳障りで甲高い断末魔のような音が物理的に収束され、相手を打ち抜く。しかし1巻で使ったときは「DDD」の魔方陣に打ち消された。呪文は「光の章・第二の神畏 伝承にありしは聖なる鐘を携えし御使い 古の誓約に基づき、今こそ滅びの音を打ち鳴らせ」(クウガもどきさんより)

[2]ヒャッカの周りに無数の光の粒が浮かび上がり、それが1つに集まって光の塊となる。呪文は「光の章――第五の神畏 伝承にありしは湖暗を漂いし聖者の魂 灯火となって舞い踊らん」 (クウガもどきさんより)

[1]水の章・第三の怪異
[2]水の章――第四の神畏
エイラク・ヒャッカ
イレギュラーズ・パラダイス
[1]ヒャッカの体の一部にして魔術の媒介でもある蒼いジャケットが霞み、数枚の紙に変化し、近くの水が渦巻き、渦の中では巨大な影が回遊し、獰猛そうな赤い二つの光が水面に映り、渦が空高く跳ね上がり、のたうつように相手をなぎ倒す。呪文は「水の章――第三の怪異 伝承にありしは大海に潜みし狡猾なる狩人 鋭き牙もちて獲物を噛み砕かん」(クウガもどきさんより)

[2]近くの水(このときは消防栓が破裂した)がまるで鯨の潮吹きのように対象物に対して水を吹き出す。呪文は「水の章――第四の神畏 伝承にありしは大海を泳ぎし白き鯨・その巨大なる体くに相応しき威厳を示せ」(クウガもどきさんより)

闇の章・第二の神畏 エイラク・ヒャッカ
イレギュラーズ・パラダイス
4巻でろくでなし館長の口を封じようとヒャッカが使用した魔術。表現できない何かをこの世界に具現化し、対象に其の何かが触れることによってその対象を消滅させる。
結局当たる事はなく、レクトはその後にベトノワールの企みで現れた自警団の皆さんに連れて行かれてしまった。
【詠唱文】:闇の章第二の神畏――古き海に眠りしは黒き深淵 其はまどろみの中にある世界・幾多の形を演じるモノなり 空ろな遊戯をもちて歓楽し、速やかに汝が世界へと戻り賜え(クウガもどきさんより)

最終、最高、最頂奥義ダブルアタック レーベン兄弟
イレギュラーズ・パラダイス
レーベン兄弟がすぐ直前にレティと交わした約束を実行に移し、まず扉を壊すために使用した技。たとえ壊れた椅子に転んで頭から突っ込むという失敗に終わったとしてもその頑丈な扉だけは公言どおり破壊したのだからその威力は折り紙付きといえるだろう。まあ頭から突っ込んだおかげという可能性もないわけではないのだが…
「「我ら兄弟に二言なし! たとえ館長に叛いても、我らが信念貫いて少女の願いを叶えるならば男子の本懐。全力、全開、全壊でレティをマスターのところへ連れて行ってやろうではないか!」」(クウガもどきさんより)

青紫の瞳 レクト・ルードワース(レクト・ローウェン)
イレギュラーズ・パラダイス
ケリポット図書館二代目館長のレクト・ルードワース(本名:レクト・ローウェン)が持つ魔眼。
9年前のグーデリア大火で生まれ育ったガマリエル・ストリートを失った直後に当時少年だったレクトの目に魔力が宿って発現したもので、一度見た物を全て記憶しているという瞳である。
この魔眼を持っているため、レクトは一瞬見る事ができればたとえ周りが暗がりであったり、相手が変装を行っていようとその物体や相手の顔などの視覚情報を記憶することができる。
魔眼が発現した理由は本編で詳しく語られることはなかったが、その一因として9年前に起こったグーデリア大火の存在やそれによる両親の死、故郷の焼失があることは間違いないだろう。(クウガもどきさんより)


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