最強挙士伝説 ファミコマンドー竜 [必殺技辞典]

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作:安田タツ夫
掲載:大陸書房 ホラーハウス12月号増刊ファミコミック第1号
1986年12月 読み切り作品

199X年の地球、核戦争によって滅亡の危機に瀕した人類。
その僅かな生き残りにとっての唯一の娯楽は、ファミコンだった。
しかし数十年後、再び地上に戻った人類の中にはファミコンの腕の優劣によって決定される厳しい身分制度が確立し、ファミコンは人々の憎悪の対象と化していた。
そのコトに心を痛め、再び人々がファミコンを楽しめる世界を取り戻すべく 悪を倒しながら世界を転々としている格闘家が居た。

そう、彼の名は・・・・・・ファミコマンドー竜!

ある村で、奴隷として強制労働をさせられていた少女に非道な鞭を振るう見張りの男。
ファミコマンドー竜はその鞭を掴み、少女を救った。
敵の基地に乗り込んだ彼は次々に現れる敵を倒して行き、遂に村を統治する悪の権化(実はロボットである)マッド・グロスと対峙する。
そして、マッド・グロスを見事打ち倒し人々をマッド・グロスから解放した ファミコマンドー竜は、ファミコンの楽しさを伝えるために再び旅に出たのだった。

ファミコンをテーマにした30Pの読み切りマンガだが、その内容は先に述べた粗筋を見れば解る通りファミコンから大きく掛け離れた恐るべき作品である。
この時点から何でたかがファミコンが人類の娯楽になったのだ、何でファミコン程度で身分制度が決まらねばならないのだと、容赦の無いツッコミを入れている人も居るだろう(否、ツッコミを入れない方が無理と言うモノだ)。
だが、この作品へのツッコミはコレだけでは済まされない。

ファミコマンドー竜の姿はかの人気格闘マンガ北斗の拳の主人公ケンシロウに酷似、もといそのままの出で立ちに加えていくつも繋げたファミコンを肩から提げて腰にファミコンソフトを巻いていると言うとても奇妙なモノである。
彼は、敵を金属製のファミコンのコントローラを使ったヌンチャクや、爆薬を仕込んだファミコン、爆裂ファミコン(コレが肩に提げたファミコンである)と言った「ファミ魂殺法」で倒している。
ファミコンを愛する男が何と罰当たりなコトをしているのだろうか(笑)。
しかも、ファミコンが本来の用途で用いられている(笑)――ゲームをしている場面はマッド・グロスが部下とゲームをしていた場面だけだった(なおこの後部下はマッド・グロスに敗北し、目から発せられたビームで呆気無く殺されている)。
コレではこの世界ではホントにファミコンが人々の娯楽なのかとイヤでも疑いたくなってしまう。

それに加えてコレを描いた安田タツ夫自身はかなりのベテランの作家で(代表作に「鋼鉄ジーグ」の原作コミックなどが在る)この作品の構成には素晴らしいモノが有り、コレがファミコマンドー竜の荒唐無稽な世界観を引き立てる結果になってしまっている。

蛇足となるが、この作品が世に出て18年後の2004年には、フジテレビの人気TV番組「トリビアの泉」にてこのマンガの存在がトリビアとして紹介され全国の視聴者、そしてファミコマンドー竜を知る人々の爆笑を誘った(と思う)。
この時竜の台詞を読み上げていた声は、心なしかケンシロウを演じたあの有名声優神谷明の声に聞こえていた。

「ファミコンは人を支配する道具じゃ無い、楽しむためのモノだ!キサマらには解らぬ人間の感情だッ!!」

※なお、タイトルの表記は誤りであるが原文に忠実にするためにこの表記で掲載した。

爆裂ファミコン ファミコマンドー竜
最強挙士伝説 ファミコマンドー竜
ファミコンの楽しさを世界に伝えることが目的のファミコマンドー竜の必殺技。 それなのにそのファミコン本体を相手に投げつけ、相手の体に巻きつけて爆発させ攻撃するという恐るべし技。

ファミ魂殺法 牙竜乱激打 ファミコマンドー竜
最強挙士伝説 ファミコマンドー竜
ファミコンの楽しさを世界に伝えることが目的のファミコマンドー竜の必殺技。 要するにただの飛び蹴りとしかいいようがない技。 「爆裂ファミコン」でファミコンを使い果たしてしまったためか、正直ファミコンとは関係ない技にしか見えない。 ちなみに掲載していた雑誌が一号で廃刊しているらしいので、実質この技が最後の技となっている。


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